最高裁判所第三小法廷 昭和31(オ)14 判決
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人多賀健三郎の上告理由第同一点について。
原審において、上告人は昭和二八年一月一日から同二九年五月末日までは一ヶ月
一三円、同二九年六月一日以降は一ケ月四二円の割合による賃料を提供したと主張
したのに対し、原審は、その主張の如き弁済提供の事実を認むべき証拠がないと判
断したのである。仮に証拠調の結果かゝる提供の事実が認められたとしても、当時
の賃料は一ヶ月六五〇円(同二九年三月以降は更に増額)に値上されていたことは
原審において当事者間に争のなかつた事実であるから、右の如き提供が債務の本旨
に従つたものといえないことは明らかであつて、原判示は相当であり、所論は採用
しえない。
同第二点について。
所論修繕費償還請求と賃料との相殺の主張は、昭和三〇年七月一八日付準備書面
において主張され、上告人はこれを同日の口頭弁論において陳述したこと記録上明
らかである。かゝる主張は、論旨においても、修繕個所が散在し損害の算定に非常
な困難を極めたといつていることによつて窺いうる如く、その証拠調には経験上多
大の日子を要するから、「訴訟ノ完結ヲ遅延セシムベキコト」(民訴一三九条)は
明らかであり(しかもこの主張自体不充分なばかりでなく、証拠の申出もされてい
ない)、第二審において、すでに判決に熟した時期に始めてかゝる複雑な主張をす
ることは少くとも重大な過失があるものということができる。原審がこの主張を時
機に遅れたものとして却下したのは相当であり、論旨は理由がない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
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おり判決する。
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 垂 水 克 己
裁判官 島 保
裁判官 河 村 又 介
裁判官 小 林 俊 三
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